はじめに:それでも、家を手放すという選択をした話
新築の家を購入し、鍵の引き渡しを受けたのはほんの数か月前のことでした。人生で何度もあることではない、マイホームの購入。家族と何度も話し合い、立地や間取り、価格など、慎重に検討して購入した家でした。正直なところ、「やっと家が買えた」という達成感と安心感もありました。
けれど、実際に住み始めてすぐ、想定外の問題に直面することになります。それが「騒音」でした。
家の前の道路は幹線道路に近く、交通量が少なくはないことは事前にも分かっていました。とはいえ、見学のときにはそれほど気にならなかったし、新築ということもあって、防音性にもある程度の期待をしていました。
ところが、実際に住み始めてみると、車やバイクの走行音、トラックのアイドリング音などが想像以上に気になってしまい、昼間は交通量も収まらず、気が休まりませんでした。

引越し翌日には「ここには長く住めないかもしれない」と思ってしまうほどで、せっかく手に入れた家への愛着が湧く前に、不安が先に立つような状態でした。
この気持ちを妻に伝えるにも葛藤がありました。
引越し直後というタイミングもありますし、家の購入は夫婦で決めた一大イベント。それをいきなり「やっぱり手放したい」と伝えるのは、無責任に聞こえてしまうのではないかという思いがありました。
そして、それ以上に重くのしかかったのが「お金の不安」です。
この家を仮に売るとしても、まだローンは始まったばかり。残債がどれだけ残るのか。売ったとしても、その金額でローンを完済できなければ、生活に大きな影響が出てしまいます。さらに売却後の住まいはどうするのか?今後、家族が増えることも見据えると、再び購入するのか、それとも賃貸に戻るのか。決断には慎重さと勇気の両方が求められました。
こうした悩みは、なかなか人には話しづらいものです。
「家を売る」という選択は、普通の生活の中ではあまり語られることがありません。特別な事情がある人だけが経験すること――そんなイメージを持たれがちです。
でも、私は今回の経験を通して思いました。
家を買った後でも、「やっぱり違うかもしれない」と思う瞬間は誰にでもある。暮らしてみて初めて分かることもあるし、「一度買った家に一生住み続けなければならない」なんてことはないんだ、と。
この記事では、新築戸建てを購入してから売却を決意するまで、そして実際に売却活動に踏み切るまでに感じた葛藤や悩みを正直に書いていきます。
同じように、家を手放すべきかどうか迷っている方にとって、少しでも参考になるような情報や視点を届けられたらうれしいです。